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理屈はよくわかりました


50代男性、いつもは糖尿病で受診ですが、今日は脈が速いとのことで予定外の来院となりました。一見お元気そうなのですが、脈を測ってみると、一分間に110回とかなり早めです。
「脈が早いのですが、特に変わったことはありませんか?」
「2.3日前から下痢をしていて、少し水を飲むとトイレに直行です。」
「なるほど、通常の下痢だと脱水のパターンかも知れませんが、不整脈だったら困るので、心電図と血液検査をしてみましょう。」
心電図をとると、やはり脈は早いのですが、走ったときと同じ形で不整脈ではありませんでした。血液検査では、心配な感染症では無いようでしたが、かなり血液が濃縮していました。
「血液検査のパターンでは、血液が濃縮していますね。」
「はい。」
「下痢で水分の摂取が足りなくなるとすぐ脱水になってしまいます。脱水で血液の量が少なくなることにより、身体は血液をきちんと送るために脈拍数を上げて対応するのですね、そのことが起こっていると思いますよ。」
「なるほど、理屈はよくわかりました。」
「ですから、明日にかけてスポーツドリンクをしっかり飲むことにしましょう。理屈が正しければ脈も落ち着くはずです。もしそうならなければまた明日来てくださいね。」
「はい、わかりました。」
医療のコミュニケーションにはいろいろな形があると思いますが、私は可能な限り理屈を共有したいと思っています。そうしたほうが、もし思い通りにならないときも、次の方針が立てやすいと考えています。