· 

わかりました、どこか良い病院を紹介してください


60代男性、糖尿病と高血圧で治療中です。最近はコントロールも良くなってきていて元気いっぱいでした。
今日は患者さんから、
「20日くらい前、便が真っ黒くなって、2、3日続いたわ。」
とのこと、黒い便は医学用語でタール便と言って、胃や十二指腸の出血を示す重大な症状です。緊急に採血をしてみるとかなりの貧血になっています。私も驚いて、一刻も早く専門の医師に診てもらうようにうながすのですが、今は割と平気なためか、とても危険な状態であることであることがすんなりと頭に入っていかないようで、なかなか納得してくれません。
「それじゃさ、いつもと違っていること、いつもできている事ができなくなっている事ない?」
「うーん、すぐ息切れしてしまう。パークゴルフのコースもワンラウンド出来ないわ。」
「そうなのね、実際に息が切れて動けなくなるのは貧血のせいなのよ。血が薄くなっているから、その分心臓が余計に働かなくてはいけなくなって、早く息が切れるのよ。」
「ふーん」
「それはさ、便が黒くなっていたわけだから、胃から出血していたわけ。それ以外に出血したところないでしょ。」
「それはない。」
「そうすると、胃に何か病気があるわけ。それを突き止めてもう出血しないようにしないと、これからどこまで悪くなるかわからないよ。」
「そうなんですね、わかりました。どこか良い病院を紹介してください。」
病気の重大さに対して、私と患者さんの間の温度差が大きいときには、すぐに納得してくれないときがあります。そんな時にはこちらがじれったくなって、コミュニケーションの齟齬や途絶が起こりがちです。今回は多少時間はかかりましたが、最後に納得していただけてよかったです。
すぐに紹介した専門の病院から翌日に連絡があり、出血性の胃潰瘍が見つかったが、治癒傾向にあり、今後は悪化する可能性は少ないとのご連絡をいただきました。大事に至らなくて本当に良かったです。