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諦めてますから


高血圧や糖尿病の合併症として最近特に腎臓機能低下が注目されています。
腎臓機能低下は厄介なのですが、色々な薬が使えるようになった現在、血圧や血糖値をしっかりコントロールして、しっかり診ていくことでより悪化を防ぐことができるようになっています。
50代の腎臓機能が低下している患者さんに、自宅での血圧測定の重要性とか、新しい薬について説明していたら、
「私はもう諦めているんです。実は母も腎臓が悪くて、病院に行くたびに次回は透析と言われ続けて70過ぎまで生きましたし、私はそれでいいと思っているんです。自宅で血圧を測ったりするとかしたくないし、これ以上の薬はのみなくないんです。」とおっしゃいました。
うーん、なるほどね。
私は、病気は患者さんの一部だし、そもそも人生を歩むのは患者さん本人なので、医者として患者さんにあれこれと細かく指示をしたり、私が良いと思う方法を無理やりに選択させることは違うだろうと思っています。
ですから医師として、いろいろな選択肢のなかから、なるべく明るい未来が待っているだろう道を示して、納得してもらってからその道を案内するようにしています。それが医師としてできる事であって、患者さんとその道を歩いていくことが、私にとっても心地よい事だからです。
でもそれって、全ての患者さんにとって心地よいことではないことを改めて理解しました。
人が医療に何を求めているか、正しく知るって難しいですね。